春風は吹いているけれど、竿を振れないほどではない。
国道を進み右折すべきか左折すべきか・・・
そんな他愛も無い悩みすら幸せに感じるこの日。
待ちわびた今期の開幕。桜はまだ咲かないけれど春らしい麗らかな日。
結局、右折した先にある川へと向かった。
蕾を膨らませる桜の木の下を流れる清らかな流れ。
桜の木の下より少し先に車を止め、暖かな空気を思い切り吸い込む。
なんて気持ちいいんだろう。
こんな日を待っていた。いつの春もそうだ。
寒く厳しい冬を越してやってくる春。
誰もが待っている春。
緑が生い茂るまではもう少し太陽の光が必要かな。

フキノトウも生き生きとしている。
この川はとびきり美しい川ではない。
上流部でも川底にヌメリが残るような流れだけれど魚はいる。
対岸の流れ込みを注視しているとライズを発見。
心臓の音が高鳴るのが自分でも分かる様だ。

昨夜巻いたわずか8本の毛鉤のうちの#16のCDCフローティングニンフを
5Xリーダーの先へと結んだ。
水面に出る部分のCDCにだけフロータントを施しキャスト開始。
この冬の練習の成果か、離れた場所から狙えるのは楽しい。
一投目。
狙ったポイントよりも左へと毛鉤が落ちる。
失敗。
そう思った瞬間、水飛沫があがった。
慌ててアワセをおくるが時既に遅し。
まさか一発目からなんて嬉しい誤算。
この調子ならそのうち出てくれる。
数投目、流れる毛鉤にバシュッと出る。
ラインを滑らせるように軽くティップを上げヒット。

ん?軽い。軽すぎる。でも今期の一尾目。
嬉しい事に変わりはない。
おまけに足場が悪かった。ランディングの事なんて全然考えずにラインを伸ばしていたものだから
ヤマメには悪いけれどこんな写真。
この後もかわいい顔したアブラビレさんが遊んでくれる。

小さくても久しぶりのパーマークは美しい。
ライズは続いている。
大きくないのは離れて見ていても分かるけれど、やっぱりライズを見ると狙いたくなる。
流れ込みの脇の沈み石の上に狙いを付けて#18のCDCダンを投射。
毛鉤先行で流れるようキャストして数刻。
吸い込まれるように毛鉤が消えた。
ライズを繰り返していた主かは分からないけれど、少し重みを感じる事が出来る。

小さいけれどお腹パンパンのプリッとしたヤマメ。
なんて艶かしい瞳をしているんだろう。
ほんの少しの時間の楽しいライズゲーム。
嬉しいシーズンが始まった。