毛鉤と川と我が家族

フライフィッシングや日々の出来事・家族・サッカーetc秋田県能代市から発信する雑記帳。

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イワナの思い出

解禁してから時間が経ちます。
まだ早春ではありますが、ゆっくりと釣りに行く時間が取れません。

そのうち行くのは間違いありませんから焦る事もないのですがね。
どうしてこうも余裕がないのか、困ったものです。
だから魚も付き合いが悪いのかもしれません。

そんな始まったばかりのシーズンなのに・・・
ちょっとした昔話。。。。。

イワナの思い出



その日、彼は都市部を流れる川のずっとずっと上流にいた。
背中には使い古した茶色いリュック。
中にはルアーをはじめとしたありったけの釣り道具。

その川は初めてではなかったが、まだまだ未開拓の場所があった。
両岸が切り立っていて、それより先に進むにはずっと上の森を抜けるか
びしょ濡れになりながら川を行くか、二つの選択だった。
彼は後者を選んだ。
切り立った崖に沿って岩に張り付くように上流を目指した彼は
冷たい渓に身を濡らしながらも未開のポイントに辿り着いた。

流れが何段にも落ちて、岩魚の捕食に格好の場所を提供していた。
左岸を回りこんで渓をのぞいた彼の眼に飛び込んだ光景は
二尾の岩魚が水面を流れる何かに狂ったように喰らいついている姿。

彼はお気に入りの赤のスプーンを流した。
岩魚の目の前に流れた金属片に不規則な動きを与える。
しかし何も起こらない。
いや、何も起こらないのではなく継続して起こっているのだ。
岩魚達の目には人工的な金属片は何の魅力も無いようだったが
幾つも流れてくる小さな物体には狂った様に反応している。

彼は思った。
何故だ?
この川の岩魚に対してしっかりと結果を残してきた赤いルアーが
どうして見向きもされないのだろう?

熱くなった頭を冷やすには休息が必要だった。
岩に腰を下ろし水面に視線を落とすと、薄いピンク色をした小さな羽虫が沢山流れている。
自然に対する造詣も何もない彼は、これほどの虫が川を流れているのを初めて見た。
名前は分からない。
ふと思った。これなら釣れるかもしれない・・・。

渓流に入る釣人のリュックなのに、ジェット天秤や吸込針まで入っていた。
その中から袖針を一本取り出しルアーロッドから出るラインに結んだ。
オモリは付けていない。その針に薄紅色の羽虫二匹を付けた。
刺したのではなく、「付けた」というのが相応しかった。
細く、しんなりとしたその体には針がほとんど通らない。


上流から下流に向かってその「針」を流した。
流したといっても、どこを流れているのか見当がつかない。
足元には羽虫がビッシリと溜まっていた。
これだけ流れていれば偏食するだろう。
そしてこれだけ流れていれば、針に付いた虫を食う確率は限りなく無に近い。

二尾の岩魚は変わらずに水面の羽虫を口に運んでいる。
上流にいる彼から見て右の岩魚が急に横に走り出した。

次の瞬間、ルアーロッドがぐにゃりと曲がった。
全く予期していなかった彼は、大いに慌てた。
慌てた拍子に、手に取っていたガン玉ケースを落とした。

左右に暴れた岩魚は、やがて彼の手の中におさまった。
なぜ釣れたんだろう。釣れなければどうして釣れないのかと思い悩むのに。
既にもう一尾の岩魚の姿はなくなっていた。
彼は強烈に思った。毛鉤しかない、と。





津梅川の桜

セット物のフライフィッシングの道具を買った。
緑映える五月の連休に、生まれ育った田舎に帰省していた彼は
まだ自分の巻いた毛鉤で魚を釣った事がなかった。

タイイングセットを購入し、茶色いハックルにボディも茶色の無骨な毛鉤を巻いた彼は
それまでルアーや餌で釣りをしていたある川に足を運んだ。

この頃には、水面の餌を捕る魚達の行動をライズと呼ぶ事を知り
渓の中に沢山の虫たちが存在している事を知った。

護岸にぶつかり流れが再び始動する辺りでライズがあった。
フライベストも偏光グラスもランディングネットもない彼が、そのライズに対峙した。

バシッとかビシッとかではなく、ボコッとかポコンといった感じのライズだ。
春の日差しを浴びてキラキラ輝く川面には、ライズリングと白泡が描く青と白のキャンパスが広がっていた。

彼は膝を落とし低い姿勢を保ったまま、フライを流れの真ん中にポトリと落とした。
一緒に流れる虫はちょうど同じ大きさかもしれない。
何も起こらずにフライが流れ切る直前、それまでのライズの主が茶色のフライを飲み込んだ。

ロッドを握っていたのは右手だったのだろうか、それとも左手だったのか。
魚が毛鉤を飲み込んでからどこに立っていたのだろうか。
気付いた時、彼の目には砂塗れになった岩魚の姿が飛び込んでいた。
背中の模様が実に岩魚らしい魚体だった。
彼はカメラも持っていなかった。
その岩魚の姿は彼の脳裏に鮮明に刻まれた。


五月の柔らかな風が渓を吹き抜けた。
額にはじっとりと汗をかいていた。
流れる虫と同じだろうか、顔の周りを飛んでいた。

彼は思った。
これから約束された釣果などないかも知れない。
けれどもこの瑞々しい感覚を忘れてしまう事は出来ないと。



彼は今もフライロッドを振っている。
小さな小さな川で。
小さな家族と共に。
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| フライあれこれ | 22:53 | comments:10 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

引き込まれ読み応えのあるいい文章でございました。
そういう始まりからFFを始められたんですね。
春だというのに、本日は雪が舞っております。
温かい日差しの中、ユックリと釣りをしたいものです\(o⌒∇⌒o)/

| try | 2007/04/05 08:11 | URL |

初めてフライで渓流魚を釣った場面を思い出しました。

友人に連れられていったはじめてのFF釣り。
川底まで見えるジンクリアな流れには
魚の気配などまったく感じられず
半信半疑で、友人が示すポイントにフライを流すと
瞬間、どこにいたのか、小さな渓魚が水面を割って、バシャ!

それ以来、現在に至るです。

| 西洋毛鉤 | 2007/04/05 09:36 | URL | ≫ EDIT

静かに読みふけってしまいました。
オイラはただ単純に『やってみたい』で始めたから、こんな感動的なエピソードはありません(汗)
当時はフックは数字が大きくなると小さくなるのに、ラインは数字と共に大きく(太く)なるのは何で!?とか、とにかく訳分からんかったですね(笑)

でも、フライの世界から一生抜け出せないのは同じですね♪

| ヒデ | 2007/04/05 20:49 | URL |

コンバンワー。
カッコイイ記事ですね!
これで毛鉤の世界に迷いこんだのですね。
このすばらしい悪魔の世界に!

| ツララ | 2007/04/05 22:48 | URL | ≫ EDIT

>tryさん
こんな感じでFFの世界にハマりました。
早くあったかい中で釣りがしたいですね!
ぜひご一緒にFFしましょ~^^


>西洋毛鉤さん
ようこそおいでくださいました。
きっと誰もが「初めてフライで釣った時」の事は忘れられないですよね。
差し支えなければリンクさせてください!


>ヒデさん
決して感動的ではありませんよ(笑
何にも分からないのに「釣る気釣れる気」だけは満々だったんです。
もう抜け出せませんネ、この世界!


>ツララさん
そう、これで迷いこんで、未だに迷子です(爆
素晴らしくもあり、時に酷で悪魔的な魅力のこの世界。
サイコーですよね!

| JTKNのしろ | 2007/04/05 23:39 | URL |

魚を手にしても、万が一逃げられても、あの手が震えた瞬間。
これが最高!
(^_^)v

| Tammy | 2007/04/06 12:28 | URL |

こんばんは!
フライをはじめるきっかけは人それぞれだと思いますが、
「彼」がフライをはじめたきっかけは素敵ですね!
私は大学の時に、兄がキャスティングの練習をしていて、
オレンジ色のラインがシュルシュルと
手品のように伸びて行くのを見て、
ぶったまげました(笑)

ほどなく一緒に釣行し、自分の投げたフライに
水飛沫が上がった瞬間!

そして現在に至る…(笑)

| まつやん | 2007/04/06 23:09 | URL | ≫ EDIT

瞬間!

>Tammyさん
手が震えた瞬間・・・最高ですよね^^
そんな瞬間に数多く遭遇したいと願っています。


>まつやんさん
彼はただただ魚が釣りたかったんですね(笑
お兄さんがキッカケでしたか。
身近なところに先生がいて羨ましいですね。
私にも教えてくれる人がいたらもっと釣れたかも(爆
水飛沫が上がった瞬間・・・たまらない時、やめられませんネ^^

| JTKNのしろ | 2007/04/06 23:53 | URL |

 明日、、、A川に「イワナ」狙いで行って来ますヨン♪~

未だに「我流」で御座い鱒よん♪~「釣行回数」な経験値で何とかカントカ(?)・・・釣って鱒がなぁぁぁ~(汗;

| きょん^^; | 2007/04/07 20:40 | URL | ≫ EDIT

>きょん^^;さん

今頃はA川イワナと戯れてますか~?
春がどんどん深くなってきましたからね。
イワナ釣りたいなぁ~^^

| JTKNのしろ | 2007/04/08 09:30 | URL |















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